赤ちゃんのでべそ(臍ヘルニア)はいつ治る?外科医で父親として語る治療のタイミング

外科医である私も、一人の父親として悩んでいます

はじめまして。外科医の太田勝也です。今日は少し個人的なお話をさせてください。

実は私の息子、生後1ヶ月の赤ちゃんに、でべそ(臍ヘルニア)があります。妻からは「本当に様子を見ているだけでいいの?手術した方がいいんじゃない?」と聞かれます。

医師として患者さんには説明してきたことでも、いざ自分の子どものこととなると、やはり不安になるものです。

本記事では、私自身の経験をもとに、でべそはいつ治るのか、いつから治らないのかについて、親として、そして医師として正直にお話したいと思います。同じような悩みを抱える親御さんの不安が少しでも和らげば幸いです。

でべそ(臍ヘルニア)とは?実際に見てみましょう

臍ヘルニアの特徴

臍ヘルニアには、以下のような特徴があります。

  • 泣いたり、お腹に力が入ると膨らむ
  • 指で押すと「むにゅむにゅ」という音とともに引っ込む
  • 皮膚が伸びて色が変わることがある
  • 手を離すと、また膨らんでくる

この「むにゅむにゅ」という音は、ヘルニア門という穴から腸が戻る音なんです。私の息子も、妻が指で押すとこの音がして、きちんと引っ込みます。そして泣いてお腹に力が入ると、また膨らんでくる。これが臍ヘルニアの典型的な様子です。

臍ヘルニアと臍突出症の違い

いわゆる「でべそ」と呼ばれるものには、実は2つの病気があります。

臍ヘルニア

  • 腹筋の間のヘルニア門(穴)から腸が出っ張る状態
  • 押すと引っ込み、力を入れるとまた出てくる
  • 自然治癒の可能性がある

臍突出症

  • へその緒(臍帯)の遺残物や瘢痕組織(傷跡のようなもの)の残存
  • 押しても引っ込まない
  • 自然治癒はせず、手術でしか治せない
  • ただし病的なものではない

大きな違いは「押して引っ込むかどうか」です。臍突出症は押しても引っ込まず、固い感触があります。

臍ヘルニアの仕組み

臍ヘルニアは、腹筋の間に「ヘルニア門」という入り口(穴)があり、そこから腸が出っ張ってしまう状態です。

お腹の内側からヘルニア門を見ると、実際に穴が存在しているのが分かります。この穴を通って腸が出てしまうのが、臍ヘルニアの実態なのです。

自然に治るの?外科医の見解

小児外科学会の見解

日本小児外科学会によると、臍ヘルニアについて以下のように説明されています。

0〜3ヶ月の間は、お腹の壁が閉じきっていない状態です。ほとんどの子どもは成長とともに自然に閉じていきます。

多くの医師がこの通りに説明します。そして実際、これは事実です。

外科医が考える重要なポイント

ただし、外科医としてはさらに以下の点も考慮する必要があると考えています。

0〜3ヶ月は圧迫療法が最も効果的

この時期に適切な圧迫療法を行うことで、自然治癒を促進できる可能性があります。

大きな臍ヘルニアは成長に影響する可能性

臍ヘルニアが大きすぎると、以下のような問題が生じる可能性があります。

  • 腹臥位(お腹を下にする姿勢)ができない:赤ちゃんの成長に重要な姿勢
  • 寝返りが打てない:運動発達に影響

これらは赤ちゃんの成長において非常に重要な要素なので、臍ヘルニアが大きい場合は特に外科医に相談することをお勧めします。

自然治癒率:いつまで待てばいいの?

臍ヘルニアの自然治癒について、明確なデータがあります。

  • 1歳まで:約80%が自然治癒
  • 2歳まで:約90%が自然治癒
  • 3歳以降:残っている場合、自然治癒はほぼ期待できない

つまり、3歳までが自然治癒を期待できる期間であり、それ以降は手術を検討する時期ということになります。

圧迫療法とは?効果はあるの?

圧迫療法の方法

圧迫療法は、以下のように行います。

  1. 出っ張っている腸を優しく押し戻す
  2. ヘルニア門(穴)の部分に綿球を押し込む
  3. 上からテープで固定する

私の息子にも実際に行っていますが、圧迫している状態では、泣いて力を入れても「ぼこっ」と出てこなくなります。

圧迫療法が最も効果的な時期

0〜3ヶ月の間が最も効果的な時期とされています。この時期にしっかり圧迫療法を行うことで、自然治癒を促進できる可能性があります。

圧迫療法の注意点

  • 医師や看護師に適切な方法を教えてもらうことが重要
  • 現在は便利な器具も販売されている
  • 自己流ではなく、専門家の指導のもとで行うことを推奨

手術が必要な場合:最適なタイミングは?

手術の最適時期

手術を選択する場合、1歳半〜2歳が推奨される時期です。

この時期が推奨される理由

  • 自然治癒の可能性を十分に待てる:1歳までに80%、2歳で90%が治癒するため
  • 麻酔が安定している:全身麻酔のリスクが低い年齢
  • 傷の治りが良い:若い組織は回復力が高い
  • 保育園入園前に完結できる:社会生活に影響が少ない

待ちすぎず、早すぎない、バランスの取れたタイミングと言えます。

手術方法:シンプルで安全

親御さんが最も気になる手術について、詳しく説明します。

手術の特徴

  • メッシュ(異物)は使用しない:大人の鼠径ヘルニアや臍ヘルニアではメッシュを使用することがありますが、子どもの臍ヘルニアでは使いません
  • 穴を縫って閉じるだけ:とてもシンプルな手術
  • 手術時間:20〜30分程度
  • 使用する糸:吸収性の糸(半年で自然に溶けて消える)
  • 入院期間:日帰り、または1泊2日

体内に残る異物について

手術で体内に残る異物は、縫合に使用する糸だけです。そしてその糸も吸収性のため、半年もすれば完全に消失します。つまり、最終的には異物は何も残らないのです。

最も大切なこと:見極めのタイミング

臍ヘルニアの多くは自然に治ります。しかし、「いつまで待っていいのか」「いつから待っても治らないのか」、この見極めが最も大切なことなのです。

年齢別の判断基準

年齢 対応
0〜3ヶ月 圧迫療法が効果的な時期。大きい場合は外科医に相談
〜1歳 自然治癒を期待(80%が治癒)。経過観察
1歳〜2歳 さらに10%が治癒。1歳半〜2歳は手術の最適時期
3歳以降 自然治癒はほぼ期待できない。手術を検討

専門医に相談すべきケース

  • 臍ヘルニアが非常に大きい
  • 腹臥位や寝返りができない
  • 皮膚の色が著しく変わっている
  • 押しても引っ込まない(臍突出症の可能性)
  • 親として不安が大きい

医師として、父親として

私は医師として、多くの親御さんに臍ヘルニアについて説明してきました。「多くは自然に治ります」「経過を見ましょう」と。

しかし、いざ自分の息子のこととなると、やはり不安になります。「本当にこのまま様子を見ていていいのか」「何かしてあげられることはないのか」と。

だからこそ、この基準をしっかり理解することが大切だと、父親として実感しています。

  • 今、子どもは何歳なのか
  • 自然治癒を期待できる時期なのか
  • 圧迫療法が効果的な時期なのか
  • 手術を検討すべき時期なのか

不安なときは、「今、何歳なのか」を考えてみてください。それが判断の基準になります。

まとめ:同じ悩みを持つ親御さんへ

臍ヘルニア(でべそ)について、重要なポイントをまとめます。

  • 多くは自然に治る:1歳で80%、2歳で90%が自然治癒
  • 0〜3ヶ月は圧迫療法が効果的:専門家の指導のもとで実施
  • 3歳以降は自然治癒が期待できない:手術を検討する時期
  • 手術の最適時期は1歳半〜2歳:待ちすぎず、早すぎないタイミング
  • 手術はシンプルで安全:20〜30分、日帰りまたは1泊2日
  • 大きな臍ヘルニアは成長に影響する可能性:早めに専門医に相談

この動画が、同じようなことで悩んでいる親御さんの安心につながれば、医師として、そして同じ悩みを持つ父親として、私は嬉しいです。

不安なときは、一人で抱え込まず、専門医に相談してください。そして「今、何歳なのか」という基準で、冷静に判断することが大切です。

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よくある質問(FAQ)

Q1. でべそは押して引っ込めても大丈夫ですか?

臍ヘルニアの場合、優しく押して引っ込めること自体は問題ありません。むしろ圧迫療法として推奨されています。ただし、正しい方法で行うことが重要なので、医師や看護師に適切な方法を教えてもらってください。押しても引っ込まない場合は臍突出症の可能性があるため、専門医に相談しましょう。

Q2. 圧迫療法は自宅でもできますか?

圧迫療法は、医師や看護師から正しい方法を教わった上で、自宅でも実施できます。現在は専用の器具も市販されています。ただし、自己流で行うのではなく、必ず医療機関で指導を受けてから行うことをお勧めします。適切な方法で行わないと効果が得られない可能性があります。

Q3. 臍ヘルニアが原因で腸が締め付けられることはありますか?

臍ヘルニアでは、鼠径ヘルニアで起こる「嵌頓(かんとん)」という状態は非常に稀です。臍ヘルニアのヘルニア門は比較的広く、腸が締め付けられることはほとんどありません。ただし、赤ちゃんが激しく泣き続ける、嘔吐する、膨らんだ部分が硬く赤く腫れるなどの症状があれば、すぐに医療機関を受診してください。

Q4. 1歳を過ぎても治らない場合、すぐに手術が必要ですか?

1歳を過ぎても、2歳までにさらに約10%が自然治癒します。そのため、1歳を過ぎたからといってすぐに手術が必要というわけではありません。手術の最適時期は1歳半〜2歳とされています。ただし、臍ヘルニアが非常に大きく成長に影響している場合や、親御さんの不安が強い場合は、専門医と相談して適切な時期を決めることをお勧めします。

Q5. 手術後の傷跡は目立ちますか?

臍ヘルニアの手術は、おへその自然なしわに沿って切開するため、傷跡は比較的目立ちにくくなります。また、子どもは組織の回復力が高く、傷の治りも良好です。使用する糸も吸収性のため、抜糸の必要もありません。半年もすれば糸も完全に溶けて消失し、傷跡も徐々に目立たなくなっていきます。

Q6. 臍突出症と臍ヘルニアの見分け方は?

最も分かりやすい見分け方は「押して引っ込むかどうか」です。臍ヘルニアは指で優しく押すと「むにゅむにゅ」という音とともに引っ込みますが、臍突出症は押しても引っ込まず、固い感触があります。また、臍ヘルニアは泣いたりお腹に力を入れると膨らみますが、臍突出症は常に出っ張ったままです。判断に迷う場合は、専門医に診てもらうことをお勧めします。

参考情報:腹臥位と寝返りの重要性

赤ちゃんの成長において、腹臥位(お腹を下にする姿勢)と寝返りは非常に重要な発達段階です。

腹臥位の重要性

  • 首や背中の筋肉を強化
  • 運動発達を促進
  • 頭の形を整える
  • 視野を広げ、認知発達を促す

寝返りの重要性

  • 全身の筋肉を使う運動
  • バランス感覚の発達
  • 次の発達段階(ハイハイなど)への準備

大きな臍ヘルニアがこれらの姿勢や動きを妨げている場合は、早めに専門医に相談することが重要です。

※本記事の内容は一般的な医学情報を提供するものであり、個別の診断や治療を保証するものではありません。お子様の症状や治療方針については、必ず小児外科専門医にご相談ください。