オウム病とは
オウム病(psittacosis)は、オウムやインコなどの鳥類からヒトに感染する人獣共通感染症で、インフルエンザ様の症状や肺炎を引き起こします。原因菌は**Chlamydia psittaci(クラミジア・シッタシ)**で、空気中の乾燥した糞や羽毛を吸入することで感染します。
日本国内における発生状況
オウム病は日本では比較的稀な疾患とされています。年間の報告数は多くても数十例程度であり、過去10年間を見ても大規模な流行は確認されていません。
しかし、ペットとして鳥類を飼育する家庭の増加や、鳥類との接触機会がある職業(ペットショップ、動物園など)では、散発的な発症が報告されています。
原因と感染経路
感染経路
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主に吸入感染(乾燥した糞や分泌物の粉塵)
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鳥との密接な接触、掃除、羽毛の処理などから感染
主な症状と潜伏期間
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潜伏期間:5〜14日
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高熱、咳、倦怠感、頭痛、筋肉痛など
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肺炎や呼吸困難を伴う場合も
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症状がインフルエンザや他の肺炎と類似
鑑別診断が必要な疾患
オウム病は非特異的な呼吸器症状を示すため、以下の疾患との鑑別が重要です:
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インフルエンザ
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マイコプラズマ肺炎
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レジオネラ肺炎
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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)
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一般的な細菌性肺炎
鳥との接触歴が明らかでない場合、これらの疾患と誤診されるリスクがあるため、患者の生活背景の聴取が重要です。
診断と検査
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問診(鳥との接触歴)
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血液検査・CRP上昇
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抗体価測定(ペア血清)
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PCR法での病原体DNA検出
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胸部X線での肺炎像
治療法
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**テトラサイクリン系抗菌薬(ドキシサイクリン)**が第一選択
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妊婦や小児にはマクロライド系抗菌薬(アジスロマイシン)
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通常は2〜3週間の抗菌薬投与で改善
届出義務(四類感染症)
オウム病は、感染症法に基づく四類感染症に分類されます。
そのため、診断した医師は直ちに最寄りの保健所に届け出る義務があります。
これは、感染源の特定や二次感染防止を目的とした公衆衛生上の対応に不可欠です。
予防と対策
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鳥の飼育環境を清潔に保つ
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鳥の糞や羽毛を扱う際はマスク・手袋を使用
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異常が見られた鳥は速やかに獣医師に相談
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高齢者や免疫低下者は過度な接触を避ける
医療機関受診の目安
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鳥との接触歴があり、発熱・咳・倦怠感が出現した場合
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肺炎の症状があるにもかかわらず抗菌薬が効かない場合
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医師に「オウム病の可能性」について伝えることが重要です