押しても戻らないヘルニアは危険!嵌頓ヘルニアの症状と緊急性

足の付け根に膨らみを感じて「もしかして脱腸?」と不安になっていませんか?特に、その膨らみが「押しても戻らない」状態になった場合は、すぐに対処が必要な緊急事態の可能性があります。この記事では、嵌頓ヘルニアの危険性と見逃してはいけない症状について詳しく解説します。

嵌頓ヘルニアとは?「脱腸が戻らない」状態

鼠径ヘルニア(いわゆる”脱腸”)は、足の付け根あたり(鼠径部)に腸や腹膜が飛び出してくる病態です。多くの場合、横になったり手で押したりすると膨らみが引っ込みます。

しかし、嵌頓(かんとん)とは、飛び出した臓器(多くは腸)が腹壁の隙間で挟まれたまま戻らなくなり、血流が阻害されたり腸の通り道が閉ざされたりする、非常に危険な状態を指します。

この状態を放置すると、腸の壊死(組織が死んでしまうこと)や腹膜炎、敗血症など、命に関わる合併症を引き起こす可能性があると言われています。

嵌頓の危険なサイン-これが出たら緊急受診

一般的な鼠径ヘルニアと比較して、嵌頓状態では明らかに「いつもと違う」サインが現れます。以下のような症状がある場合は、すぐに医療機関を受診してください。

すぐに受診すべき症状

  • 膨らみが戻らない: 横になっても、指で押しても戻らない状態が続く
  • 膨らみの変化: 急に固くなってきた、または急激に大きく腫れてきた
  • 激しい痛み: 立っているだけ、動くだけでズキズキと強く引っ張られるような痛みがある
  • 消化器症状: 吐き気、嘔吐、お腹の張り、ガスが出ない、便が出ないなどの症状
  • 全身症状: 発熱、顔色が悪い、冷や汗、脈が速いなどの異変

特に重要: 「戻らない膨らみ」と「激しい痛み」がある場合は、ためらわずに救急車を呼ぶことが推奨されます。血流障害が起こってから6時間以内に処置できれば、組織の壊死を免れる可能性が高いとされています。

なぜ嵌頓ヘルニアは危険なのか

嵌頓状態では、主に以下の2つの問題が同時に進行すると考えられています。

血流障害

腸の一部が挟まれることで血液が十分に届かなくなり、組織が虚血状態に陥ります。この状態が続くと、組織の壊死に至る可能性があります。

腸閉塞(通過障害)

挟まれた腸の内容物やガス、液体が流れなくなり、腹部膨満や嘔吐、腸管拡張などが起こることがあります。

これらの状態が進行すると、腸管の穿孔(破れること)や腹膜炎、さらには全身に毒素が回る敗血症といった致命的な事態を引き起こす可能性があると言われています。

緊急時の対処法と受診のタイミング

すぐに救急受診すべきケース

以下のような状態が見られた場合は、ためらわず救急外来を受診しましょう:

  • 足の付け根の膨らみが急に硬く、大きくなった
  • 横になっても押しても戻らない
  • 強い痛み、嘔吐、お腹の張り、ガスや便が出ない
  • 発熱、顔色不良、冷や汗、脈が速いなどの全身症状

受診時のポイント

「外科」「消化器外科」「ヘルニア専門外来」などがある医療機関を選ぶことが望ましいでしょう。

医療機関では、問診、視診、触診で膨らみの状態を確認し、必要に応じて超音波検査やCT検査が行われることがあります。嵌頓が確定した場合は、緊急手術が必要になる可能性があります。

受診前の注意点

  • 安静にして、できるだけ動かないようにする
  • 飲食を控える(吐き気や嘔吐、腸閉塞の可能性があるため)
  • 無理に膨らみを押したり引っ込めようとしない(状況を悪化させる可能性があります)

嵌頓ヘルニアを予防するために

すでに足の付け根に膨らみを感じている場合は、嵌頓になる前に早めの受診と治療を検討することが重要です。

日常生活での注意点

  • 重い物を持つ、長時間立つ、激しい咳、便秘など、腹圧がかかる動作を避ける工夫をする
  • 「痛みがないから大丈夫」と放置せず、膨らみに気付いたら早めに専門医に相談する
  • 定期的に膨らみの状態を確認し、変化があればすぐに受診する

よくある質問(FAQ)

Q1: 鼠径ヘルニアは自然に治りますか?

A: 鼠径ヘルニアは自然治癒することはないと言われています。放置すると嵌頓のリスクが高まる可能性があるため、早めの治療が推奨されます。

Q2: 嵌頓ヘルニアになりやすい人はいますか?

A: すでに鼠径ヘルニアがある方、高齢の方、便秘や慢性的な咳がある方などは、腹圧がかかりやすく嵌頓のリスクが高まる可能性があると考えられています。

Q3: 夜間に症状が出た場合はどうすればいいですか?

A: 激しい痛みや膨らみが戻らない状態であれば、夜間でも救急外来を受診することが推奨されます。時間が経過するほどリスクが高まる可能性があります。

Q4: 手術以外の治療法はありますか?

A: 嵌頓状態になった場合、多くのケースで緊急手術が必要になる可能性があります。嵌頓になる前の段階であれば、計画的な手術で対処できることが一般的です。

まとめ:「戻らない膨らみ」は待たずに行動を

足の付け根の膨らみが「押しても戻らない」または「戻らなくなった」という状態は、緊急を要するサインである可能性があります。

嵌頓状態に進行すると、数時間で腸閉塞、腸壊死、腹膜炎など、命に関わる合併症を起こす可能性があると言われています。「様子を見よう」と考えず、速やかに医療機関を受診することが大切です。

すでに膨らみを感じている方は、嵌頓になる前に早めの治療を検討することが、最善の選択と言えるでしょう。

※この記事は医療情報を提供するものであり、診断や治療を行うものではありません。症状がある場合は、必ず医療機関を受診してください。