ヘルニアとは?
患者さんから「ヘルニアとは何ですか?」という質問をよくいただきます。言葉としてはよく耳にするものの、具体的にどのような状態を指すのか分かりにくいかもしれません。今回はヘルニアの基本的な定義や種類、治療について解説していきます。
ヘルニアの定義
ヘルニアとは、臓器が正常な位置からはみ出してしまう現象を指します。これは病名ではなく、体のどこかで起こる異常な状態の総称です。このような異常な変化を「変性疾患」と呼ぶこともあります。
ヘルニアの種類
脳ヘルニア
脳ヘルニアとは、脳が正常な位置から逸脱してしまう現象のことです。医療従事者は患者さんの左右を判断する際に、医学的な視点で判断します。例えば、右の脳が左にシフトしてしまうといった現象が脳ヘルニアです。
椎間板ヘルニア(頸椎・胸椎・腰椎)
脊椎動物である人間は、運動を可能にするために脊椎が曲がったり動いたりする構造を持っています。その間にある椎間板(ディスク)が変形し、中の組織が突出して神経を圧迫すると、痛みやしびれが発生します。これが椎間板ヘルニアです。
腹壁・鼠径部ヘルニア(消化器領域)
腹部では、横隔膜や腹壁(お腹の壁)、さらには鼠径部(足の付け根)で臓器が正常な位置を逸脱することがあります。これらのヘルニアは、消化器外科や内科が専門とする領域になります。
専門医の分野とヘルニアの診療科
ヘルニアの発生する部位によって、診療科も異なります。
- 脳ヘルニア → 脳神経外科・脳神経内科
- 椎間板ヘルニア(頸椎・胸椎・腰椎) → 整形外科
- 腹壁・鼠径部ヘルニア → 消化器外科・消化器内科
ヘルニアが起こる部位によって診療を受けるべき科が異なるため、適切な医師の診察を受けることが重要です。
ヘルニア患者の統計データ
日本国内におけるヘルニアの患者数は非常に多く、特に腰椎・頸椎の問題を抱える人が圧倒的に多いです。具体的な統計データは以下の通りです。
- 腰椎・頸椎ヘルニア患者数: 約3000万人
- 鼠径部ヘルニアの発生率(男性): 約27.5%
- 年間の手術件数
- 鼠径部ヘルニア: 12.5万人
- 椎間板ヘルニア(頸椎・腰椎・胸椎合計): 4.3万人
- 腹壁ヘルニア: 2.4万人
- 総手術件数: 約20万人
手術件数を見ると、鼠径部と腹壁の外科領域の手術が最も多く行われています。これに対し、椎間板ヘルニアの手術件数は比較的少ないですが、それでも年間4万人以上の患者が手術を受けています。
ヘルニアと診断されたら?
「ヘルニア」と診断された場合、それは病名ではなく現象であることを理解することが重要です。具体的にどの部位のヘルニアかを把握し、適切な診療科で治療を受ける必要があります。
また、すべてのヘルニアが手術を必要とするわけではありません。特に椎間板ヘルニアでは、保存療法(薬物療法やリハビリ)で改善するケースも多いです。一方で、鼠径部ヘルニアや腹壁ヘルニアは手術が必要になることが多いため、医師とよく相談しながら治療方針を決めることが大切です。
まとめ
- ヘルニアは臓器が正常な位置から逸脱する現象の総称であり、病名ではない。
- 部位によって病名が変わり、診療科も異なる。
- 日本国内では約3000万人がヘルニアの問題を抱えており、年間20万人が手術を受けている。
- 治療方法は保存療法と手術の2種類があり、適切な診療科を受診することが重要。
ヘルニアについて正しい知識を持ち、適切な治療を選択することで、より良い生活を送ることができます。