「足の付け根(鼠径部)にポッコリとした膨らみがある」「長時間立っていると違和感がある」 もしこのような症状がある場合、それは「脱腸(鼠径ヘルニア)」の可能性があります。
「痛くないから」と放置してしまう方も多いですが、実は自然治癒することはなく、放置することで命に関わる危険な状態になることもあります。 今回は、脱腸の原因や症状、そしてなぜ放置してはいけないのかについて、分かりやすく解説します。
01 | 脱腸(鼠径ヘルニア)とは?
脱腸とは、医学的には「鼠径(そけい)ヘルニア」と呼ばれる良性の病気です。 「鼠径部(足の付け根)」の筋肉の壁に隙間ができ、そこから本来お腹の中にあるはずの腸や脂肪が、皮膚の下まで飛び出してしまう状態を指します。
タイヤがすり減って弱くなった部分からチューブが飛び出す様子をイメージすると分かりやすいかもしれません。成人の場合、特に40代以上の男性に多く見られますが、女性にも発症することがあります。
02 | なぜなるの?脱腸の主な原因
脱腸の原因は、大きく分けて「体の構造的な弱体化」と「お腹への圧力」の2つが重なることで起こります。
加齢による筋肉の衰え
最も大きな原因は「加齢」です。年齢とともに足の付け根の筋肉や筋膜が弱くなり、薄くなることで隙間ができやすくなります。そのため、中高年の方に多く発症する傾向があります。
お腹に圧力がかかる生活習慣
お腹に強い力がかかる(腹圧が上がる)動作も、脱腸の引き金になります。
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立ち仕事が多い
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重い荷物をよく持つ
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便秘気味で、トイレで強くいきむ
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咳やくしゃみをよくする(喘息や花粉症など)
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肥満気味である
03 | これって脱腸?症状と進行
初期の段階では痛みを感じないことも多いため、見逃されがちです。以下のチェックリストに当てはまるものがないか確認してみましょう。
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立った時やお腹に力を入れた時に、足の付け根に膨らみが出る
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膨らみは指で押したり、横になったりすると引っ込む
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足の付け根に突っ張るような違和感や不快感がある
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長時間歩いたり立っていたりすると、下腹部が重苦しい
進行すると、飛び出す膨らみが大きくなり、指で押しても戻りにくくなります。また、痛みや引きつれ感を伴うようになり、日常生活に支障をきたすこともあります。
04 | 「痛くないから」は危険!放置するリスク
脱腸と診断されても、「痛くないからまだ大丈夫」「手術は怖いから様子を見よう」と考える患者様は少なくありません。 しかし、大人の脱腸は薬やトレーニングで治ることはなく、自然治癒することも絶対にありません。
放置すればするほど、穴(ヘルニア門)は徐々に大きくなり、飛び出す腸の量も増えていきます。その結果、次に解説する「嵌頓(かんとん)」という危険な状態を引き起こすリスクが高まってしまいます。
05 | 最も恐ろしい「嵌頓(かんとん)」とは
脱腸を放置する最大のリスクは**「嵌頓(かんとん)」**です。 これは、筋肉の隙間から飛び出した腸が、出口のところで締め付けられ、お腹の中に戻らなくなってしまった状態です。
嵌頓が起こると、締め付けられた腸への血流が止まり、短時間で腸が腐って(壊死して)しまいます。
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激しい痛み
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吐き気・嘔吐
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患部が硬くなり、赤黒く腫れる
このような症状が現れた場合、命に関わるため、一刻を争う緊急手術が必要になります。 (※当院のような日帰り手術ではなく、大きな病院での入院・開腹手術が必要になるケースが大半です。)
06 | よくある質問(FAQ)
患者様から診療の際によくいただくご質問をまとめました。
Q1. 手術は痛いですか?
A. 手術中は麻酔を使用するため、痛みを感じることはありません。
当院の日帰り手術では、局所麻酔や静脈麻酔(眠っているような状態になる麻酔)を適切に組み合わせて行うため、手術中に痛みを感じることはありません。 術後、麻酔が切れると多少の痛みや違和感が出ることがありますが、処方する痛み止め(鎮痛剤)を服用していただくことで、日常生活に支障がない程度にコントロールできることがほとんどです。
Q2. 仕事はいつから復帰できますか?
A. デスクワークであれば、手術翌日からの復帰も可能です。
手術の内容や患者様の体調にもよりますが、事務作業やデスクワークであれば、手術の翌日から復帰される方も多くいらっしゃいます。 ただし、重い荷物を持つ作業や、腹圧がかかる激しい運動を伴うお仕事(建設業、運送業など)の場合は、再発防止と傷口の保護のため、1週間〜2週間程度控えていただくようご案内しています。具体的な復帰時期については、診察時に医師へご相談ください。
Q3. 高齢でも手術は受けられますか?
A. はい、80代・90代の方でも手術を受けていただけます。
脱腸(鼠径ヘルニア)はご高齢の方に多い病気ですので、多くの高齢者の方が手術を受けられています。 むしろ日帰り手術は、入院による環境の変化がないため、ご高齢の方にとっても「認知機能の低下(入院ボケ)」や「足腰の筋力低下」のリスクが少なく、精神的・身体的負担が軽いというメリットがあります。 ※心臓や呼吸器などに重篤な持病がある場合は、連携する総合病院をご紹介するケースもございます。まずは一度検査にお越しください。
Q4. 手術後の入浴や飲酒はいつから可能ですか?
A. シャワーは翌日から可能です。飲酒は2〜3日後が目安です。
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入浴・シャワー: 手術当日は控えていただきますが、翌日からはシャワーを浴びていただけます。湯船に浸かる入浴は、傷口の状態を確認してから(通常は術後1週間程度で)可能になります。
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飲酒(お酒): アルコールは血行を良くし、手術部位の出血や腫れを引き起こす可能性があるため、手術後2〜3日は控えてください。
07 | まとめ:違和感を感じたら、まずはご相談ください
脱腸(鼠径ヘルニア)は、早期に治療すれば、体への負担が少ない「日帰り手術」で完治できる病気です。 「もしかして脱腸かな?」と思ったり、足の付け根に違和感を感じたりした場合は、放置せずに専門医の診察を受けることを強くお勧めします。
当院では、患者様のライフスタイルに合わせ、仕事や家事への影響を最小限に抑えた日帰り手術を行っております。まずは一度、お気軽にご相談ください。

