鼠径ヘルニアの日帰り腹腔鏡手術の取り組みと最新治療戦略

こんにちは!今回は、鼠径(そけい)ヘルニアに対する日帰り腹腔鏡手術の取り組み についてご紹介します。
私が行っている タップ法(TAPP法) を中心に、鼠径ヘルニアの治療戦略、術式の選択、日帰り手術のメリットについて詳しく解説します。


鼠径ヘルニアの治療戦略:進化する手術法

鼠径ヘルニアの手術の歴史

鼠径ヘルニアの治療法は長い歴史の中で進化してきました。

🔹 1980年代以前:従来法(マックベイ法など)➡ 再発率 12%
🔹 1990年代:メッシュを使用する 「テンションフリーメソッド」(リヒテンシュタイン法)➡ 再発率低下
🔹 2000年代:腹腔鏡手術(TAPP法・TEP法)➡ 再発率がさらに低下し、QOLが向上
🔹 現在:腹腔鏡手術が標準治療の一つとなり、ロボット支援手術も登場

現在、日本では 鼠径ヘルニア手術の約5~6割が腹腔鏡手術 となっています。


鼠径ヘルニアの手術法と比較

現在、鼠径ヘルニアの手術には主に以下の3つの方法があります。

手術方法 特徴 メリット デメリット
リヒテンシュタイン法(開腹手術) 従来のメッシュ法、鼠径部を切開して修復 ✅ すべての患者に適用可能 ✅ 手術時間が短い ❌ 傷が大きい ❌ 術後の痛みが強い ❌ 両側ヘルニアでは傷が増える
TAPP法(腹腔鏡手術) お腹の中からメッシュを設置、腹膜を縫合 ✅ 傷が小さい ✅ 術後の痛みが少ない ✅ 早期回復・社会復帰が可能 ❌ 全身麻酔が必要 ❌ 腹膜切開・縫合が必要
TEP法(腹腔鏡手術) 腹膜を切らずにメッシュを設置 ✅ 腹膜を傷つけない ✅ 術後の痛みが少ない ❌ 解剖学的理解が必要 ❌ 腹膜損傷で視野が悪化する可能性

👉 TAPP法とTEP法の手術成績を比較した研究では、再発率・合併症率に有意差なし(どちらも優れた術式)。


腹腔鏡手術(TAPP法)における重要ポイント

TAPP法のメリット

傷が小さい(5mm~1cmの傷3か所のみ)
術後の痛みが少なく、回復が早い
両側ヘルニアにも対応しやすい
腹腔内を直接観察できるため、解剖学的に正確なアプローチが可能

TAPP法の技術的ポイント

  1. 適切な剥離範囲の確保
    • 腹膜前筋膜の正確な剥離を行い、メッシュを適切に配置
  2. 慢性疼痛の予防
    • 重要な神経(腸骨下腹神経・腸骨鼠径神経など)を温存
    • 「嘆きの三角(Triangle of Doom)」「災害の台形(Trapezoid of Disaster)」を避ける
  3. メッシュ固定の工夫
    • 再発予防のため MPO(ミドルパブリックオプニオン)を適切にカバー
    • 慢性疼痛予防のため、不要なタッキングを避ける

👉 適切な手術戦略と手技の工夫により、TAPP法の安全性・有効性が向上!


日帰り腹腔鏡手術の取り組み

日帰り手術のメリット

患者の負担が軽い(入院不要、早期退院)
医療コスト削減(入院費が不要)
社会復帰が早い(翌日からデスクワーク可)

導入のための準備

  1. 手術環境の整備

    • 短期滞在手術部門の改築・回復室の新設
    • 麻酔管理・術後モニタリングの強化
  2. 術前・術後管理の標準化

    • 患者説明の充実(YouTube・パンフレット活用)
    • チェックリストの作成(安全な手術実施のため)
  3. 適応患者の選定

    • 全身麻酔に耐えられる患者
    • BMI30未満の患者
    • 抗凝固薬(ワーファリン等)の服用なし

👉 安全な日帰り手術を実施するため、適切な患者選定と医療体制の整備が必須!


今後の展望

ロボット支援手術の可能性
近年、ロボット支援手術が注目されていますが、現在の研究では「TAPP法と比較して優位性があるとは言えない」との結果が出ています。
今後の技術進歩により、ロボット手術の有効性がさらに検討されるでしょう。

働き方改革と日帰り手術の普及
日本は 入院期間が長く、外来受診回数が多い という特徴があります。
日帰り手術を普及させることで、医療の効率化と患者のQOL向上を目指します。


まとめ

鼠径ヘルニアの治療法は「手術のみ」!
開腹手術・TAPP法・TEP法の選択肢があり、患者の状態に応じた手術が重要!
TAPP法は傷が小さく、痛みが少なく、早期回復が可能!
日帰り腹腔鏡手術の導入には、術前・術後管理の標準化が鍵!
今後はロボット手術や働き方改革の影響も考慮しながら、さらに発展させていく必要がある!

鼠径ヘルニアの手術は、技術革新により進化を続けています。
患者の負担を減らし、より安全で効果的な治療を提供するために、日帰り腹腔鏡手術の普及 に引き続き取り組んでいきます。