進化の過程が鼠径ヘルニアを引き起こしている?

こんにちは、消化器外科医の太田勝也 です。
今回は、進化の視点から鼠径ヘルニアの謎に迫ります。

人間が四足歩行から二足歩行へ進化したことが、鼠径ヘルニアの発生につながっている ことをご存じでしょうか?
なぜ鼠径ヘルニアが起こるのか、そのメカニズムを進化の観点から解説していきます。


🔹 鼠径ヘルニアとは?

ヘルニア とは、臓器が本来の位置からはみ出してしまう状態 のことを指します。

鼠径ヘルニア は、足の付け根(鼠径部)に発生するヘルニア で、小腸や大腸が飛び出すため、「脱腸」 とも呼ばれます。

患者さんの主な症状

  • 立つ・歩くと 鼠径部が膨らむ
  • 横になって休むと 膨らみが引っ込む
  • 放置すると 痛みが出たり、膨らみが戻らなくなることも

鼠径ヘルニアは自然に治ることはありません!
唯一の治療法は 手術 です。


🔹 鼠径ヘルニアの発症頻度

人生で鼠径ヘルニアになる確率 は、疫学調査によると以下の通りです。

男性の発症率27%(約4人に1人)
女性の発症率3%(約30人に1人)

たとえば、茨城県の男性人口142万人 に当てはめると、約38万人が一生のうちに鼠径ヘルニアになる計算 になります。

日本では年間約14万人が手術を受ける ほど、頻度の高い病気なのです。


🔹 鼠径ヘルニアの原因とは?

1️⃣ 生まれつきの穴が開いているケース

胎児期、睾丸は腎臓の裏側(背中)にあります。
1歳までに足の間まで降りてくる過程で、腹膜が巻き込まれ、鼠径部に穴が開くことがあります。
この穴が塞がらずに残ると、生まれつき鼠径ヘルニアになりやすい状態になります。


2️⃣ 加齢と筋肉の衰えによるケース

年齢とともに、鼠径部を支える筋肉が弱くなると、穴が開きやすくなります。
重力の影響もあり、腹圧がかかることで鼠径ヘルニアが発生します。

📌 この2つの原因により、鼠径ヘルニアは主に「子ども」と「中高年の男性」に多い病気 となっています。


🔹 鼠径ヘルニアになりやすい人とは?

以下のような人は、特に鼠径ヘルニアになりやすいと考えられます。

10歳未満の子ども(先天的な要因)
40歳以上の男性(加齢による筋力低下)
咳をよくする人(慢性気管支炎・喘息など)
妊娠・出産経験のある女性
スポーツをよくする人
重い荷物を持つ仕事の人
長時間の立ち仕事をしている人
肥満、腹部手術の既往歴がある人

📌 特に、長時間立っている仕事や、咳をよくする人は要注意です!


🔹 他の動物ではどうなのか?

哺乳類のオスの睾丸 は、すべて お腹の中で作られます。
しかし、種によって睾丸の位置は異なります。

イルカ・クジラ → 背中に睾丸がある
➡ 水中生活のため、外気で冷やす必要がない。

ゾウ → 背中に睾丸がある
➡ 進化の過程で水生動物だったため、冷却の必要がなかったと考えられる。

ネズミ → 足の間にあるが、体内に近い
➡ 体が小さく、自然に冷却できるため外にはほとんど出ていない。

犬・猫・豚 → 玉袋に睾丸が降りる
➡ 鼠径ヘルニアになりやすい。

📌 進化の過程で、哺乳類のオスの睾丸は環境に適応してさまざまな位置に進化しました。


🔹 人間は進化の過程で鼠径ヘルニアになりやすい体になった?

人間はもともと四足歩行でしたが、進化の過程で二足歩行になりました。
これにより、鼠径部(足の付け根)に重力がかかるようになり、ヘルニアの発生リスクが高まった のです。

他の霊長類(ゴリラ・チンパンジー)は四足歩行が中心で、鼠径ヘルニアの発生率は低い。
二足歩行になった人間は、鼠径部に負荷がかかることで鼠径ヘルニアになりやすくなった。

📌 つまり、鼠径ヘルニアは「二足歩行の代償」とも言える病気なのです!


🔹 予防はできるのか?

残念ながら、進化の過程で起こる病気のため、完全な予防は不可能です。
しかし、以下の点に気をつけることでリスクを下げることはできます!

適度な運動で腹筋を鍛える
肥満を防ぐ(腹圧がかかるのを防ぐ)
便秘や咳を予防する(腹圧をかけない生活を心がける)

📌 しかし、鼠径ヘルニアが発生した場合は手術が唯一の治療法です!


🔹 まとめ

鼠径ヘルニアは進化の過程で起こる病気!
二足歩行になったことで、鼠径部に負荷がかかり、ヘルニアの発生リスクが上がった。
男性の27%、女性の3%が一生のうちに発症する!
予防は難しいが、適度な運動や体重管理でリスクを下げることは可能!
鼠径ヘルニアは自然に治らないため、手術が唯一の治療法!


🔹 最後に

「足の付け根に違和感がある…」
「しこりができているけど大丈夫?」

このような症状がある場合は、早めに医療機関を受診しましょう!
現在お悩みの症状を一刻も早く治し、元の生活に戻れることを願っています。

消化器外科医 太田勝也 でした!