はじめに
外科医の太田勝也先生による、医療現場でよく見られる腹部症状の重要度ランキングをご紹介します。お腹の不調は日常的によくある症状ですが、その裏には重大な病気が隠れていることもあります。
今回は、外来や救急で医師が実際に遭遇する頻度が高く、かつ重要度の高い症状を10位から順にご紹介していきます。第1位は、おそらく皆さんの想像通りの症状です。
お腹のトラブルランキングTOP10
症状はないものの、健康診断で便潜血陽性やCT検査で異常影が発見されるケースです。外来では非常に多い主訴ですが、無症状でも癌が隠れている可能性があるため、医師にとっては決して油断できない症状です。
心窩部(みぞおち)のムカムカ感や重い感覚を訴える症状です。よくある症状ですが、ここで最も大事なのは、消化器の医師はまず最初に心筋梗塞や狭心症のような心臓の病気を除外することです。胃の症状に見えても、実は心臓に問題があることもあるのです。
そけいヘルニアや腹壁ヘルニアの症状です。ここで最も重要なのは、腸閉塞が起きているかどうかを確認することです。単なる膨らみだと軽視せず、緊急性の判断が求められます。
血中のビリルビン値が極度に上昇し、目や皮膚が黄色くなる、尿が異常に濃くなるといった症状が現れます。頻度は高くありませんが、一発で重症です。時間との勝負になるため、入院の可能性が高いことを知っておいてください。
「なんとなく食べられない」「体重が落ちてきた」という訴えです。数値には出にくいものの、実は最も危険な症状の一つです。胃がん、大腸がん、膵がんなど、重大な病気が隠れている可能性があります。
便が出なくて苦しい、お腹が張るという症状です。医師から下される最も危険な言葉は「ただの便秘でしょう」。実は腸閉塞のサインである可能性もあるため、それを正しく見抜くことが医師の重要な役割です。
真っ赤な血が便器いっぱいに出る、または黒い便が出るという症状です。診察時には、血が止まっているかどうか、血圧や脈拍が正常かどうかを確認し、出血の量を慎重に評価します。出血の訴え方は性別や年齢によっても異なるため、注意深い観察が必要です。
熱が下がらない、抗菌薬を飲んでも治らないという状況です。この場合、胆嚢炎、胆管炎、虫垂炎(盲腸)などの可能性があります。抗菌薬を処方するか、ドレナージ(管を入れて膿を出す処置)を行うか、手術をするかの判断が求められます。発熱だけでも重症の病気が隠れていることがあります。
吐いているという事実自体が重要なサインです。腸閉塞が隠れていることがあり、特に以前お腹の手術を受けた方に多く見られます。過去の病歴がとても大事ですので、診察時にはしっかりと医師に伝えることが重要です。
消化器医が扱う病気のほとんどは、この「腹痛」という一言から始まります。軽度のものから、虫垂炎、胆嚢炎、腸閉塞、腸管穿孔、腸管虚血まで、すべて腹痛から始まります。
医師は腹痛の診察を通じて、「今日手術すべきか」という緊急手術適応の有無を見極めています。外科医だけでなく、消化器内科医も手術適応があるかないかを常に診ております。
医師が重視する3つの診断ポイント
🔍 外来で医師が最も注目していること
- 腸閉塞の有無
多くのお腹の症状において、腸閉塞が隠れていないかを常に確認しています。 - 感染の有無と処置の必要性
感染が起きているか、そしてどのような処置が必要かを判断します。 - 緊急手術適応の判断とタイミング
今日手術すべきか、まだ待てるかという適応とタイミングの見極めが最も重要です。
患者さんの主訴(訴え)は、あくまで病気の入り口にすぎません。医師はその背後にある重大な病態を見極めることに注力しています。
まとめ
💡 覚えておきたいポイント
お腹の症状は日常的によく起こるものですが、その背後には重大な病気が隠れていることもあります。特に食欲不振や体重減少など、数値に表れにくい症状には注意が必要です。
また、過去に腹部の手術を受けた経験がある方は、腸閉塞のリスクが高まるため、診察時には必ずその情報を医師に伝えるようにしましょう。
少しでも気になる症状がある場合は、「様子を見よう」と自己判断せず、早めに医療機関を受診することをお勧めします。

